こんにちは。成城補聴器フィッティングルームです。世田谷区は梅雨明け前の曇り空。夏の暑さを予感させる気温になっています。
そんな最中、対汗性能の高さから Oticon Zeal(オーティコン ジール)を先週お買い求め頂いたお客様から、フィッティング事例の周知についてご許可を頂けましたので、下記の通りご案内申し上げます。
補聴器は適切なフィッティング調整により、その効果が発揮されます。しかし、装用者のきこえの状態によっては、その効果が異なる場合があります。
成城補聴器フィッティングルーム販売価格
オーティコン ジール (両耳)充電器込み・マイクロモールド込み
990,000円(消費税なし・不要)

1. 装用者背景(Customer Background)
- 年齢・性別
- 60歳代・男性
- 主訴
- 40歳代の頃から両耳の聴こえに不自由を感じていた。
- 聴覚障害の原因・既往歴
- なし。年齢とともに徐々に。
- 補聴器使用歴
- 40歳代から両耳に使用。これまでに6台購入。現在使用中の機種はオーティコン リアル 耳かけ型+既製の耳栓。
2. 聴覚評価(Audiological Assessment)
- 純音聴力測定(気導・骨導)
平均聴力レベル(四分法) <右> 61.3 dB <左> 58.8 dB

3. 補聴器選定(Device Selection)
- 選定理由
- 汗をかく事が多く、耳かけ型形状(オーティコン リアル)の故障頻度が高かった。故障も内部の腐食(サビなど)が生じていた。耳あな型の方が、発汗に伴う故障が少なくなると思ったため。
- 機種・クラス・チャンネル数
- Oticon Zeal 指名買い。耳あな型補聴器(CIC形状)でありながら、防水性能に優れ、無線接続も可能な機種であるため。更にこれまでオーティコン社の使用実績があり、周辺機器(テレビアダプタ等)も入手済みであることから。
- イヤモールドの有無・材質・ベント設計
- 耳型採取による、マイクロモールド 有り。
- ジールは既製の耳栓、耳型採取を伴うカスタムモールドの両方が使用可能。だが、既製の耳栓の使用に伴うゆるい装用は、紛失の恐れ、何より音質の低下が有り得るとの当店舗の考えから、マイクロモールドの作成を当店舗 認定補聴器技能者がお勧め。
- 片耳/両耳の判断理由
- これまで両耳装用。聴力も左右差ほぼ無く、両耳装用が望ましいと装用者 御本人、技能者 双方の意見が一致。
4. 製品入荷時チェック(認定補聴器技能者の視点・印象)
成城補聴器フィッティングルームでは「鼓膜に正対する位置にイヤホン(音口)を設置しなければ、良好な聴こえに至るのが困難である」との考え方から、聴力型や平均聴力にかかわらず耳型採取をほぼ全例において実施します。


また一般的な外耳道形状は、その多くが2回曲がりです。そのため外耳道 第2カーブの先まで補聴器形状を作り込みます。これはオーダーメイド耳あな型補聴器に限らず、耳かけ型補聴器(BTE) イヤモールド、耳かけ型補聴器(RIC) SPシェルも成城補聴器では同様です。

こちらの写真は、フォナック補聴器(Phonak)のオーダーメイド耳あな型補聴器 最新のバートI90-R(充電式)を、成城補聴器仕様の形状で製造したものです(頭頂方向からの見た目)。上方が鼓膜方向。ご覧の通り、入口から右へ1回、左へ1回の合計2回の曲がりが確認出来ます。フォナック バートならば、2回曲がりの製造が実現可能です。
ここまで作ることが出来れば、音響的に有利に働きます(後述)し、なにより抜けによる音質低下や紛失のリスクが限りなくゼロに近くなります(ただしCICでは無い、カナル形状になるのでジールよりも目立ちます)。
今回のジールでも、マイクロモールドの作成指示において、第2カーブの先までの製造指示をオーティコン補聴器へ行いましたが、結果的に仕上がってきた形状がこちら。

(え!曲がり無し・・・!?)
仕上がってきた形状は”曲がり無しの真っ直ぐ形状”でした。
ジールは製品本体がそもそも第1カーブ部を備えていますので、当社の考えを実現するにはマイクロモールド側でもう1回の曲がりが欲しいところ。そうしなければ、鼓膜に真っ直ぐ音が届かず、外耳道内壁にぶつかりながらの歪んだ音・減衰した音圧になってしまいます(直接音ではなく、反射音で聴くことになる)。

これは、ジール充電ケースへの収まりを考慮したモデリング(形状決定)で致し方ないのかもしれません。
尚、日本の市場では多くの店舗で1回曲がり、場合によっては曲がりが見られない形状での製造が多い様に思います。これは製造する補聴器メーカーのモデリング部隊や、各店舗 認定補聴器技能者の考え方(装用のし易さ重視など?)に基づきます。
お手持ちの補聴器形状の曲がりが2回無いからと言って、決して製造不良ではありません(むしろ一般的とも言えます)。
5. 初期フィッティング(Initial Fitting)
- 補聴器周波数特性
通常、今回の様に1kHz 60dBHLの聴力の方には、当店 成城補聴器フィッティングルームでは1kHz 60dBSPL入力時に、80dBSPL程度の出力に成るように補聴器の特性を調整します。

成城補聴器フィッティングルーム仕様の形状の場合、2ccキャビティ60dBSPL入力の補聴器特性比で各周波数10dBから20dB程度プラスのファンクショナルゲインが得られるため、弱めの調整でも十分な効果を発揮します。外耳道の残存容積に起因すると思われる、音響効率が比較的に良い補聴器ですね。
ボイル=シャルルの法則
PV = nRT 「理想気体の状態方程式」です。
日本では高校生の時に化学で習います。
P:圧力
V:体積
PとVは反比例の関係なので、V(体積)を小さくすれば、P(音圧)は上がります。
しかしながら今回のジールでは、前述の通りマイクロモールド長さが短い為、鼓膜正対が不可。鼓膜面までの残存容積も大きくなるので、利得ボーナスは得られない事が想定されます。
そこで出力は通常より10dB程度強くなるように調整しました(1kHz 60dBSPL入力時に、90dBSPL程度の出力)。次のグラフ、ピンク色のラインが60dBSPL入力です。
60dBSPL入力時の出力特性(ピンク色のカーブ)は、ピーク・ディップ(山・谷)が極めて少ない、綺麗な特性が描けていると思います。Zealの設計の優秀さ、チャンネル数の多さが功を奏している様に考えます。
- 初期ゲイン設定

- 補聴器 設定値

尚、メモリ切り替えがこれまでお使いの補聴器では設定されていました(”会議”などの使用環境に応じて変更)が、当店舗の補聴器は通常「単一メモリでいつでもよく聴こえる」を目指していますので、今回も単一の設定値と致しました。
6. 客観的評価(Objective Evaluation)
- 音場閾値測定(装用下・裸耳)
下記は、補聴効果測定<音場閾値>結果です。白抜き三角は裸耳(補聴器をお耳にされていない)ときの、最小可聴域値(その方が聞き取れる、一番小さな音)です。対して塗りつぶし三角は装用時(補聴器をお耳にされている)の音場下域値。
右耳

左耳

左右とも25dBから35dBの当店舗ターゲットラインに各周波数が入っています。必要十分な出力である様に推察します。
- 語音明瞭度の改善(補聴器装用下)

こちらは「ことばのききとり」の測定です。日本聴覚医学会が作成された、67s語表を用いています。ことばを聴いたときの語音明瞭度(正答率)を測ります。
日常会話程度の音圧(50dB、60dB)時に、両耳裸耳では0%の正答率だったのが、両耳装用下では明瞭度がそれぞれ75%、70%まで上がりました。
次回以降、音質調整の機会に、最高語音明瞭度(その方の一番聴き取れた場合の正答率と、その時の音圧)を把握しつつ、そのパーセンテージを日常会話程度の音圧で実現できる出力を目指す予定です。
またご本人様の意向次第ですが、販売者と購入者で完結しがちな補聴器調整に対して、耳鼻咽喉科医師の指導の下で実施する補聴器適合検査を通して、第三者的な視点での適合評価を頂くこともおすすめです。
6. 主観的評価(Subjective Evaluation)
装用3日後に、ご使用者様からE-mailが届きました。
成城補聴器 (認定補聴器技能者 名)様
(ご本人様 名)です。ジールはなかなか快調で感謝いたします。
暑くて汗をかいても耳掛け型と違って気にする必要はないので気が楽です。
iPhoneの電話の音やテレビアダプターでの音量も今までとは違い大きく聞こえます。
外に出た時の騒音の大きさには辟易しますが、お教えいただいた通り、プラマイゼロの音量で聴いています。
初期フィッティングとしては比較的好評価で安心致しました。
以上です。
私も技術向上に努める身。耳鼻咽喉科の先生や、認定補聴器技能者の方からのご指導や、補聴器を検討中、使用中の方のご質問等に真摯にお応えしたく存じます。
なにかお気づきの点、不備、ご不明な点がございましたら、是非下記よりお申し付け下さい。
今年の暑い日本の夏も、対汗性能の高まった各社補聴器を成城補聴器フィッティングルームはご提案して参ります!お気軽にご来店・ご相談を下さいませ。







